Last Updated on 2025年11月14日 by sakura
はじめに
初めて来院される方からよくいただく質問に、「一回で治りますか?」というものがあります。この質問はとてもよく分かります。
痛みがあるときは「できるだけ早く良くなりたい」と思うものです。しかし、実際には痛みの原因や体の状態によって、経過は大きく異なります。
痛みには大きく分けて2つのタイプがあります
当院のように筋骨格系を中心に診ている場合、痛みの原因は大きく分けて次の2つです。
① 炎症による痛み
筋肉や靭帯などの組織が損傷し、炎症が起きている状態です。
炎症は体が自分で組織を修復しようとする自然な反応であり、手技によって直接「治す」ことはできません。
このタイプの痛みは、時間の経過とともに炎症が落ち着くのを待つ必要があり、1回の施術で劇的に良くなることはまずありません。
では炎症時の治療は不要なのかと言うとそうではありません。炎症が起きているのは悪くなっている部分の一部ですし、身体の歪みなどが炎症を長引かせるかもしれないからです。
② 筋肉の緊張や体のバランスの崩れによる痛み
もう一つは、筋肉が硬くなった結果、神経や血管を圧迫したり、体のバランスを崩して関節や椎間板に負担をかけるタイプの痛みです。
この場合は、筋肉の緊張を緩めたり、体の歪みを整えることで、症状が軽減する可能性はあります。
ただし、軽減したとしてもそれは一時的なものであり、体の使い方や筋バランスが根本的に変わらなければ、再び同じ痛みを繰り返してしまうことがあります。
「一回で治る」は「一晩で合格するようなもの」
よく、「今日1回施術を受けたら、明日の痛みはなくなりますか?」と聞かれます。
これは、塾に行って「今日勉強したら明日の試験に合格しますか?」と言うのに少し似ています。
中には一度の施術で大きく改善する方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合は計画的に体を整えていくプロセスが必要になります。
痛みは「登山」と同じ
痛みの経過を登山に例えると、痛みは頂上に登ってから下山していくものです。
たとえば急性のぎっくり腰の場合、発症から3日ほどは痛みが強くなっていくことが多く、痛みがピークに達していない状態で施術をしても、かえって痛みが強くなることがあります。
つまり、「山を登っている最中」は無理をしないことが大切なのです。
施術の意味は荷物を持ってあげること
それでは施術に意味はないのか?というと、そうではありません。
登山で言えば、「施術は荷物を一部持ってあげる」ようなものです。
荷物を持ってもらっても、登山そのものを代わりにしてもらうことはできません。
しかし、負担が減ることで歩くペースが上がり、結果的に目的地(=回復)への到達が早まるのです。
これは急性期でも慢性期でも同じで、施術は「自然治癒力を助けるためのサポート」だと考えています。
慢性的な痛みは「下山中に迷子になった状態」
慢性痛の場合は、痛みが長く続いているということ。つまり、下山の途中でルートを見失っているような状態です。この場合、正しいルート(=体の回復方向)を見つけ出すことが施術の役割になります。
ルートが分かれば、そこからは体自身の回復力で自然に下山(回復)していきます。
当院の考え方
当院では、最初から「1回で治そう」「1回で治せる」とは考えていません。治っていくには順序があり、時間がかかるのです。特に炎症を伴う急性期では、過度な刺激が悪化につながることもあるため、状態を見ながら段階的に施術を進めていきます。
1回ごとの施術は「体が良くなる方向に向かっているか」を確認する大切な時間です。
そして、施術とあわせてセルフケアや生活習慣の見直しを行うことで、回復をより確実なものにしていきます。
最後に
「1回で良くなりますか?」という質問に対する答えは、こうなります。
炎症がある痛みは1回では良くなりません。
筋肉の硬さや体の歪みが原因であれば、変化を感じることもありますが、根本的に治すには時間と積み重ねが必要です。
施術は「痛みを取る」ことが目的ではなく、「体が治っていく力を最大限に引き出す」ためのサポートです。焦らず、確実に体を整えていくことで、痛みを繰り返さない、しなやかな体を目指していきましょう。
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