慢性腰痛とは
腰痛を時間的に分類すると急性腰痛と慢性腰痛に分けられ、その多くに筋肉が関与しています。その筋肉が関係するものは大抵1ヶ月もあればよくなってしまうのでそれ以上経過して症状に変化が見られないようであれば慢性腰痛と考えて差し支えないでしょう。
慢性腰痛の痛みが起きるのは硬くなった筋肉が血管を圧し潰すことによって血行が悪くなり痛みを生じる場合や硬くなっている筋肉を伸ばした時に痛みを生じる場合です。
前者の典型的な腰痛は椅子に座っていると段々痛くなってくること。後者であれば立ったり座ったり、前屈後屈等の動作によるストレッチ効果により痛みを引き起こします。
原因
慢性腰痛で筋肉が硬くなる原因は何かというと直接的には使い過ぎによる疲労であり、間接的にはストレスによる交感神経の緊張によるものと考えています。そこに自然治癒力の低下が加わると硬くなった筋肉が元に戻りにくくなり閾値を超えると腰痛が起こります。
使い過ぎ
腰の筋肉の使い過ぎというと前屈みになって重いものを持ちあげることを思い浮かべるかもしれません。確かに毎日何時間もそのような仕事をされている方が腰痛がになった場合は最初にそれを疑いますが、それ以外の方は重いものを持つようなことは1年間を通じてもそれほど多くはないはず。
それよりも毎日何時間も座ることが腰痛の原因になります。というのは座るということは腰痛に関係する筋肉使うからです。
慢性腰痛の人は前に屈む時、椅子に座っている時、椅子から立ち上がる時に痛みを訴えることが多く、これらの動作を注意深く見ると腰よりも股関節が大きく動いていることに気が付きます。
例えば下に落ちた物を拾う時に最初に曲がるのは股関節で腰が曲がるのは最後の方になってから。椅子に座っている時にも曲がっているのは腰ではなく股関節。椅子から立ち上がる時も腰をほとんど曲げることはなく、股関節を一度屈曲してから伸展して立ち上がるのです。
つまり腰痛は腰よりも股関節周囲の問題であることが多く、特に股関節を直角位に曲げ続けているために疲労を起こしやすい座るという動作が最も腰痛に関係するものなのです。
交感神経の緊張
雨が近づくと腰痛や頭痛が起きたり、古傷が痛むということをよく聞きますが、これは天候の変化による交感神経の緊張が原因と言われています。
この交感神経の緊張は何も天候だけで起きるのではありません。精神的な問題や環境の変化や体調不良でも起きるのですがこれらをまとめてストレスと言います。
ストレスが一時的なものであればそれほど問題はないのですが長期化すると身体に影響を及ぼします。例えばストレスによって交感神経が緊張すると筋肉が硬くなるのですがストレスが解消しなければその硬さが取れなくなるのです。
自然治癒力の低下
人間の身体は自分で治す力、いわゆる自然治癒力と言うのが備わっているため例え腰痛になったとしても普通は自然に修復されます。ところが自然治癒力を超えるほどの酷使を続けた場合や、生活習慣や生活環境のストレスにより交感神経が緊張して自然治癒力が低下している場合は修復が遅れ、最終的には最も修復が遅れている部分から痛みを引き起こすのです。
通常は腰痛が起きると自分の身体をいたわりはじめるのでそのうち自然治癒力も回復し痛みも消えていくのですが、中にはそれでも一向に良くならない人も出てきます。これが慢性腰痛です。身体をいたわっているのに良くならないのであればあとは自然治癒力が回復していないということになので、そのような場合は腰のみに焦点を当てるのではなく自然治癒力も同時に回復させる必要があるのです。
症状
慢性的な腰痛はぎっくり腰ほど痛みは強くありませんが筋肉由来の腰痛なのである動作をすると腰が痛い、同じ姿勢をしているとだんだん痛くなってくるという症状がみられます。
腰を曲げると痛い
上記でも言いましたが筋肉由来の腰痛の場合、腰を曲げると痛いのは硬くなっている筋肉が伸ばされるからなのですが、その時に前に曲げるときも後ろにそらすときも腰ではなく股関節が一番曲がります。
つまり筋肉由来の腰痛の場合、腰ではなく股関節の筋肉が伸ばされるのが一番の理由になります。そのため一般的に行われる腰へ治療というのは無意味ではないのですが最も重要なものではありません。股関節へのアプローチが最も重要な治療になります。
朝や夕方になると痛い
毎朝起きた時に腰が痛いのは寝ている間は身体を動かさないのと体温が下がることによって筋肉が硬くなっているからで、夕方になると腰が痛くなってくるのは筋肉が疲労して硬くなっているからです。
腰痛がない人でもでも朝や夕方は筋肉は硬くなるのですがもともと腰の筋肉はそこまで硬くなっていないので腰痛までには至りません。一方腰が悪い人はもともと股関節の筋肉が硬くなっているのでプラスの出来事が加わることによって更に筋肉が硬くなって痛みを生じるのです。
座っていると痛い
上記で筋肉由来の腰痛は股関節周囲の筋肉が硬くなっているのが原因と言いました。特に座っていると股関節を曲げ続けるので股関節周囲の筋肉は疲労して硬くなり、硬くなった筋肉は血管を圧迫して血行不良になり、血行不良は痛みを引き起こすことになります。
対処法
腰痛の原因の多くが股関節周囲の筋肉であるため最も簡単な腰痛対策は股関節周囲の筋肉を緩めること。長時間の坐位を続けない、同じ姿勢を続けない、運動をする、ストレッチをする、テニスボールを該当する筋肉に当ててグリグリする、ウォーキングするということになります。
もし椅子に座り続けないといけないならば椅子を高くするか座布団などを下に入れて股関節の曲がりを減らすようにすると良いでしょう。ただし椅子を高くすると相対的に机が低くなるため、場合によってはそれも腰痛の原因になるのでその辺は様子を見ながら調節してください。
姿勢
背筋を伸ばして骨盤を垂直にして座ることが正しい座り方と一般的に言われているため、骨盤が後ろに倒れる座り方は良くないことと思われています。
ところが後ろにもたれかかるリクライニングチェアは骨盤が後ろに倒れますが、そのせいで腰が悪くなったという話はあまり聞いたことがありません。少なくとも座っている状態で骨盤を後ろに倒すのは悪いわけではなさそうです。
背筋を伸ばした座り方、リクライニングチェアの座り方には骨盤から上半身迄が一直線になっているという共通点があります。骨盤が垂直であれば上半身も垂直に、骨盤が後ろに倒れるのであれば上半身もその角度に合わせれば腰痛にはなりにくいのです。
ところが机に向かって作業をする場合は骨盤は後ろに倒れやすく上半身は前かがみという相反する状態になり、それらを支える筋肉が疲労して硬くなって上半身と骨盤の境目である腰に痛みが起きやすくなるのです。
座っていると痛くなってくる人は深く腰掛けて背筋を伸ばして座る、猫背にならないように椅子と机の高さを調節する、椅子の高さが調節できない場合は座布団を下に敷くようにして効果のほどを見てください。
治療
腰痛は腰に治療するというのが一般的なイメージかもしれませんが、上記で述べたように股関節や骨盤を動かしている筋肉が原因で腰痛が起きることが多いので治療もその周囲の筋肉がメインになります。
加えて慢性腰痛はストレスによる自然治癒力低下が治りを妨げているので、腰だけ股関節だけを治療しても治りは良くありません。自然治癒力を回復させるような治療やセルフケアが必要になるため全身を見ていく必要があります。
そのため接骨院では慢性腰痛の保険治療は不可で自費(鍼灸気功治療か整体治療)での治療になります。
最後に
腰痛の多くは筋肉由来のものであるため通常であれば1~2ヶ月程度で良くなります。それ以上経過しても良くならない場合は筋肉以外の可能性も考えられますので先ずは病院に行き、その他の部分に異常がないと確認してから整体なり鍼灸の治療を開始するようにして下さい。